上映作品


Aプロ『パーティーと招待客』

  (O slavnosti a hostech/1966/70/モノクロ/スタンダード)

©State Cinematography Fund 配給:チェスキー・ケー

 脚本・監督:ヤン・ニェメツ、原案・脚本・美術監督・衣装:エステル・クルンバホヴァー、撮影:ヤロミール・ショフル、編集:ミロスラフ・ハーイェク、音響:イジー・パヴリーク、音楽:カレル・マレシュ、演奏:シュチェパーン・コニーチェク指揮の映画交響楽団、プロダクションデザイナー:オルドジヒ・ボサーク

出演:ヘレナ・ペイシュコヴァー(マルタ)、ヤナ・プラハジョヴァー(夫人)、ズデナ・シュクヴォレツカー(エヴァ)、パヴェル・ボシェク(フランチシェク)、カレル・マレシュ(カレル)、エヴァルト・ショルム(夫)、イジー・ニェメツ(ヨゼフ)、ヤン・クルサーク(ルドルフ)、イヴァン・ヴィスコチル(主人・招待者)、アントニーン・プラジャーク(アントニーン)、ダナ・ニェムツォヴァー(花嫁)、ミロニュ・ノヴォトニー(花婿)、ヨゼフ・ポダニー(秘書の男)、ヨゼフ・シュクヴォレツキー(お客) 他

 ニェメツ監督の長編第2作目。ピクニックにやってきた7人の男女が奇妙な野外パーティーに招待される。主人は養子を迎え、若いカップルの結婚式と、自分の誕生日を同時に祝うのだと言う。養子となる男、ルドルフは理不尽な要求をし、それに逆らったカレルは暴力を受ける。友人のフランチシェクはカレルを反逆者と批判し、カレルは自分は民主主義者だと反論する。主人も友人たちも口々に「民主主義者」を標榜するが、次第に、主人やルドルフに加担する者、同化していく者など、夫婦や友人の間に亀裂が生まれ、たわいない会話の中で、全体主義の不気味さが描かれる。湖畔のパーティー会場の美しい美術や洗練された衣装は原案・脚本のクルンバホヴァーが担当する。

  本作はカフカ的とも評され、ベケットやイヨネスコの不条理劇のような不思議な魅力を持つ。プレミア上映で物議を醸し、激怒したプルジネツ議員により『ひなぎく』と共に国会で批判され、ニェメツは国家騒乱罪容疑で逮捕される。一説に、主人役のヴィスコチルがレーニンに似ていたため共産党批判と取られたと言われるが、映画が全体主義の構造や暴力を描いているのは歴然としており、映画を見たノヴォトニー大統領は不快さをあらわにし、作品は上映禁止となる。また映画監督のショルム、心理学者のイジー・ニェメツ(ニェメツ監督のいとこ)、作家のシュクヴォレツキーやヴィスコチルといった反体制派の知識人が数多く出演していたこともこの作品が睨まれた要因と言われる。7080年代の「正常化」時代には検閲によりお蔵入りの状態が続くが1989年以降に国内外で上映され再評価が高まった。*カンヌ映画祭招待作品、ベルガモ映画祭グランプリ受賞、三葉虫映画祭受賞(エステル・クルンバホヴァー、ヤン・ニェメツ)、パリのシュルレアリスト映画祭受賞、「映画と時間(フィルム・ア・ドバ)」誌アンケートで一位


Bプロ『ひなぎく』 

Sedmikrásky/1966/75/カラー/スタンダード)

 ©State Cinematography Fund 配給:チェスキー・ケー

 原案・脚本・監督:ヴェラ・ヒティロヴァー、原案:パヴェル・ユラーチェク脚本・美術・衣装:エステル・クルンバホヴァー美術・撮影:ヤロスラフ・クチェラ音楽:イジー・シュスト、イジー・シュリトゥル編集:ミロスラフ・ハーイエク音響:ラジスラフ・ハウスドルフ プロダクションデザイナー:カレル・リエル

 出演:イトカ・ツェルホヴァー(マリエ1・金髪)、イヴァナ・カルバノヴァー(マリエ2・ツインテール)、ヤン・クルサーク(蝶収集家)、ヨゼフ・コニーチェク(ワインバーのダンサー)、ユリウス・アルベルト(髭の老人)、ヘレナ・アニージョヴァー(トイレの女) 他

 

 マリエ1とマリエ2は、姉妹と偽り、男たちを騙しては食事をおごらせ、嘘泣きの後、笑いながら逃げ出す。部屋の中で、牛乳風呂を沸かし、紙を燃やし、ソーセージをあぶって食べる。グラビアを切り抜き、ベッドのシーツを切り、ついにはお互いの身体をちょん切り始め、画面全体がコマ切れになる。ヒティロヴァーがカメラマンのクチェラや美術・衣装のクルンバホヴァーと共に、色ズレやカラーリング、実験的な効果音や光学処理、唐突な場面展開など、様々な映画的実験を行う。音楽や部屋の装飾、衣装などのセンスも抜群で60年代的な自由さに満ちあふれている。

 1989年までの社会主義時代、すべての映画が国家予算で作られていたため、国会で予算の無駄遣いと批難されるが、『ひなぎく』は労働者向けの上映会でも大受けで、作家のミラン・クンデラも擁護し、1968年のプラハの春を準備したとも言われる。

  チェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグはプロの俳優を使わず自由な演技をさせるという特徴を持つが、マリエ1とマリエ2も演技経験の全くない素人で、一人は帽子店の店員、一人は学生だったという。スタッフや関係者が出演することも多く、マリエ達がトイレで出会う背中のあいたドレスの女は、衣装デザイナーのヘレナ・アニージョヴァーで彼女は『闇のバイブル』では祖母役を演じたうえ、『火葬人』にも出演し、シュヴァンクマイエル監督の『ルナシー』にも櫛を持つ老婆で出演しているが、『受難のジョーク』では本業の衣装を担当している。*ベルギー映画批評家協会賞、フィンランド映画批評家協会賞、ブリュッセル国際映画技術大会、三葉虫映画祭(ヴェラ・ヒティロヴァー、ヤロスラフ・クチェラ)、1966年最も成功した映画主導賞(ヤロスラフ・クチェラ)、ベルガモ国際映画祭グランプリ

ひなぎくの情報はこちらにもございます

 


Cプロ『愛の殉教者たち』 

(Mučedníci lásky/1966/73/モノクロ/スタンダード)

 ©State Cinematography Fund 配給:チェスキー・ケー

原案・脚本・監督:ヤン・ニェメツ、原案・脚本・作詞・美術監督・衣装:エステル・クルンバホヴァー撮影:ミロスラフ・オンドジーチェク音楽:カレル・マレシュ、ヤン・クルサーク歌・出演:マルタ・クビショヴァー、カレル・ゴット 他演奏:ヤン・ハマーJr.(ピアノ)、シュチェパーン・コニーチェク指揮の映画交響楽団 他編集:ミロスラフ・ハーイェク音響:フランチシェク・ファビアーンプロダクションデザイナー:オルドジヒ・ボサーク

出演:1章:ペトル・コプジヴァ(オペレーターの男)、マルタ・クビショヴァー(郵便局の帽子の女)、イジー・ライヘル(友人)、イトカ・ツェルホヴァー(『ひなぎく』マリエ1)、イヴァナ・カルバノヴァー(『ひなぎく』マリエ2) 他

2章:ハナ・クベロヴァー(ナスチェンカ)、カレル・ゴット(歌手)、ヤン・クルサーク(軍医)、ヤン・クルンバフ(流れ者のギター弾き) 他

3章:ヨゼフ・コニーチェク(ルドルフ)、デニサ・ドヴォジャーコヴァー(青ざめた女性)、アレナ・チェプコヴァー(夫人)、パヴェル・ボシェク(ボシェク)、ズデニェク・ファンタ(ファンタ)、ミロニュ・ノヴォトニー(ノヴォトニー) 他

 

 ニェメツのデビュー作『夜のダイヤモンド』同様、台詞を極力排除し、全編音楽と効果音と移動し続ける運動感に満ちた映像で、三つの愛の物語を描く。

 第1章「操作責任者の誘惑」髭の男の合図で夜に向かう人々の喧騒が始まり街のノイズと共にジャズが流れる。仕事を終えたオペレーターの男はジャズが流れる街に向かう。女達は彼に意味ありげに笑いかけ、知り合った男女の酒の相手をし、夜が更ける。やがて朝の喧騒が訪れると

 第2章「ナスチェンカの夢」ある屋敷の召使いナスチェンカは、6人の従者に取り巻かれた美しい歌声の歌手に憧れる。手の届かない相手と知り、失意の彼女に、怪しげな軍医が声をかけて連れ去るが

 第3章「孤児のルドルフの冒険」ルドルフという名の男がある家に入り込むと、庭で優雅にシャンパンを飲む家族がいる。彼らは口々に男のことをヤクプと呼び、家の中に招き入れる。彼が孤児だと知ると更に歓待してくれるが

 1章と3章の歌及び出演もするマルタ・クビショヴァーはチェコの国民的歌手で、チェコ事件の際、当局に秘密のラジオ局から抵抗と自由の歌詞に変えた『ヘイ・ジュード』を歌ったことで有名。音楽を担当するヤン・クルサークは俳優としても独特の存在感があり、様々な作品に色事師的な役どころで出演している。本作には同時期に撮影された『ひなぎく』の二人のマリエもワンシーン出演している。*三葉虫映画祭(ヤン・ニェメツ、エステル・クロンバホヴァー)、パリのシュルレアリスト映画祭受賞。

 


Dプロ『狂気のクロニクル』

Bláznova kronika/1964/85/モノクロ/スタンダード)

 ©NFA 協力:日本スカイウェイ

 原案・脚本・美術・監督:カレル・ゼマン、脚本:パヴェル・ユラーチェク解説:ラドヴァン・クラートキー撮影:ヴァーツラフ・フニュカ音楽:ヤン・ノヴァーク演奏:フランチシェク・ベルフィーン指揮による映画交響楽団編集:ミロスラフ・ハーイェク音響:ロマン・フロフプロダクションデザイナー:ズデニェク・ロスコパル

 出演:ペトル・コスタ(ペトル)、ミロスラフ・ホルプ(マチェイ)、エミーリア・ヴァーシャーリオヴァー(レンカ)、ヴァレンチナ・ティーロヴァー(ヴェロニカ姫)、カレル・エファ(姫の婚約者) 他  ナレーション・道化師の声:フランチシェク・スモリーク

 

 実写と、ゼマンらしい切り絵アニメーションを融合させ、三十年戦争を舞台に強制徴兵される農夫ペトルと戦争に右往左往する人々を戯画的に描く。道化が記す世界の年代記(クロニクル)は戦争ばかり。戦いの神様は空から息を吹きかけて町を火の海にする。風向き次第で調子を変えるマチェイとともに、ペトルと可愛い村娘レンカは変装をして捕虜となり、お城に連れて行かれる。

 脚本を担当したユラーチェクはヌーヴェルヴァーグの監督の一人で、作劇(ドラマトゥルク)担当や脚本家、あるいは製作者として『ひなぎく』や『つながれたヒバリ』にも参加している。

*サンフランシスコ国際映画祭 長編映画最優秀賞・長編映画演出最優秀賞、アディスアベバ国際映画祭第1位、カンヌ国際青少年映画祭 長編映画中年部門賞・長編映画部門審査委員会名誉賞・少年少女審査委員会名誉賞、シッチェス・カタロニア国際映画祭ファンタスティック&ホラー映画週間受賞

 


Eプロ『大通りの商店』

(Obchod na korze/1965/125/モノクロ/スタンダード)

©State Cinematography Fund 協力:CZECH CENTRE TOKYO

脚本・監督:ヤーン・カダール、エルマル・クロス、原作・脚本:ラジスラフ・グロスマン音楽:ズデニェク・リシュカ撮影:ヴラジミール・ノヴォトニー助監督:ユライ・ヘルツ編集:ヤロミール・ヤナーチェク音響:ドブロスラフ・シュラーメクプロダクションデザイナー:カレル・シュクヴォル

 出演:イダ・カミニュスカー(ボタン店のユダヤ人老婦人)、ヨゼフ・クロネル(家具職人トノ)、ハナ・スリフコヴァー(トノの妻)、フランチシェク・ズヴァリーク(トノの義兄マルクス)、エレナ・ズヴァリーコヴァー(マルクスの妻)、マルチン・ホリー(引退した会計士)、マルチン・グレゴル(床屋)、ユライ・ヘルツ(ユダヤ人の男) 他

 

 1942年、スロヴァキアの小さな町にさえない家具職人トノが妻と暮らしている。妻の兄はナチスの手下で、トノはユダヤ人の老婦人から没収した店を任される。人のいい彼は老婦人を追い出すことが出来ず、かくまうことになるが、ユダヤ人迫害は徐々に強まっていく。トノ役のヨゼフ・クロネルと老婦人役のイダ・カミニュスカーは悲劇的な状況の中、ほのぼのとした交流をみせ、弱さと優しさをユーモアと共に表現し、その演技は世界中の映画祭で賞賛された。チェコスロヴァキア初のアカデミー賞外国語映画賞受賞作であり、1998年と2000年に国内の批評家から改めて最高の映画と評価を受ける。1965年度アカデミー賞外国語映画賞、1965年カンヌ国際映画祭特別表彰(イダ・カミニュスカー、ヨゼフ・クロネル)、1965年国家賞(ヤーン・カダール、エルマル・クロス、ヨゼフ・クロネル、イダ・カミニュスカー)、1966年度ゴールデングローブ賞主演女優賞ノミネート(イダ・カミニュスカー)、1966年度アカデミー賞主演女優賞ノミネート(イダ・カミニュスカー)、チェコスロヴァキア解放20周年芸術競技会(ヤーン・カダール、エルマル・クロス)、労働者映画祭(作品賞、ヨゼフ・クロネル、イダ・カミニュスカー)、三葉虫映画祭(ヨゼフ・クロネル)、サンフランシスコ国際映画祭、映画音楽競技会(ズデニェク・リシュカ)、カンザスシティ国立映画評議会 宝ブルーリボン賞、チェコスロヴァキア映画批評家賞、ミューズプラハ聴衆賞(作品賞、ヨゼフ・クロネル)、英国映画テレビ記者協会の投票、ニューヨークタイムズ定期投票、アディスアベバ国際芸術祭、ニューヨークポスト定期投票、オーストリアのジャーナリスト協会賞、ニューヨーク映画批評家の年間賞、アメリカの配給会社賞(作品賞、ヤーン・カダール、エルマル・クロス)、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞ゴールドプラーク賞(ヤーン・カダール、エルマル・クロス)、プルゼニュフィナーレ映画祭、1998年チェコとスロヴァキアの20世紀最高の長編映画に関する映画批評家投票、2000年スロヴァキアの映画ジャーナリストと批評家によるスロヴァキア映画と外国映画の投票受賞


Fプロ『受難のジョーク』

Žert/1968/81/モノクロ/スタンダード) ©State Cinematography Fund

協力:東京国立近代美術館フィルムセンター

脚本・監督:ヤロミル・イレシュ、原作・脚本:ミラン・クンデラ撮影:ヤン・チュジーク音楽:ズデニェク・ポロラーニーク、ヤン・サイドル衣装:ヘレナ・アニージョヴァー編集:ヨゼフ・ヴァルシアク音響:アダム・カイザルプロダクションデザイナー:レオシュ・カレン

出演:ヨゼフ・ソムル(ルドヴィーク)、ヤナ・ディーチェトヴァー(パヴェルの妻ヘレナ)、ルジェク・ムンザル(パヴェル)、ヤロスラヴァ・オベルマイエロヴァー(マルケータ)、エヴァルト・ショルム(コストカ)、ミラン・シュヴルチーナ(ヤロスラフ)、ミロシュ・レイフルト(兵士アレクセイ)、ヴィェラ・クジェサドロヴァー(ヘレナの女友達) 他

 共産主義に関する冗談を絵葉書に書いたルドヴィークは、党と大学から追放、逮捕され、鉱山の強制労働収容所に送られる。数年後、彼はラジオジャーナリストのヘレナと出会い、彼女が自分を追放したパヴェル・ゼマーネクの妻だということを知る。ルドヴィークは復讐を企てるが。映画監督のショルムが、『パーティーと招待客』同様、本作にも出演している。『存在の耐えられない軽さ』で有名なミラン・クンデラが原作と共同脚本を担当。クンデラはプラハの春の立役者でもあり、本作は公開時に大ヒットするが、チェコ事件後は上映禁止となり、クンデラも後に亡命する。*サンセバスチャン国際映画祭、ソレントのチェコスロヴァキア映画展、トルトノフ青少年映画祭、三葉虫映画祭(ヤロミル・イレシュ)受賞


Gプロ『火葬人』

Spalovač mrtvol/1968/96/モノクロ/スタンダード)©State Cinematography Fund

協力:阿部賢一、画像:ユライ・ヘルツ所蔵スキャン協力: Studio Marvil (プラハ)

脚本・監督:ユライ・ヘルツ原作・脚本:ラジスラフ・フクス音楽:ズデニェク・リシュカ撮影:スタニスラフ・ミロタ編集:ヤロミール・ヤナーチェク音響:フランチシェク・チェルニープロダクションデザイナー:ズビニェク・フロフ

 出演:ルドルフ・フルシーンスキー(カレル・コップフルキングル、チベット僧)、ヴラスタ・フラモストヴァー(ラクメー=マリエ、娼婦ダグマル)、ヤナ・ステフノヴァー(娘)、ミロシュ・ヴォグニチュ(息子)、イジー・メンツェル(ドヴォジャーク)、ヘレナ・アニージョヴァー(青ざめた女性) 他

 

 

 ナチスが台頭してくる1930年代、プラハの火葬場で棺に囲まれて仕事をするカレル・コップフルキングルは、家族思いで仕事熱心な男だが、次第に奇妙な思想に取りつかれていく。本作はチェコ事件で撮影が一時中断され、完成、公開されるがすぐに国内で上映禁止となり、1990年に再公開された。メンツェルも俳優として出演している。カメラマンのスタニスラフ・ミロタは本作で魚眼レンズを駆使した美しい映像を撮り、映画祭でも高く評価されるが、チェコ事件のソ連軍侵攻の様子を撮影したため、以後、映画を撮れなくなる。本作に出演するヴラスタ・フラモストヴァーはミロタの妻で、後に憲章77に署名したため党のブラックリストに載った。*ソレントのチェコスロヴァキア映画展示会、三葉虫映画祭(ユライ・ヘルツ、スタニスラフ・ミロタ)、シッチェス・カタロニア国際映画祭ファンタスティック&ホラー映画週間(スタニスラフ・ミロタ、ルドルフ・フルシーンスキー)


Hプロ『つながれたヒバリ』

(Skřivánci na niti/1969/95/カラー/スタンダード)©State Cinematography Fund 協力:IVC

脚本・監督:イジー・メンツェル、原作・脚本:ボフミル・フラバル撮影:ヤロミール・ショフル音楽:イジー・シュスト編集:イジナ・ルケショヴァー音響:イジー・パヴリークプロダクションデザイナー:オルドジヒ・ボサーク クリエイティブグループ:パヴェル・ユラーチェク、ヤロスラフ・クチェラ

出演:ルドルフ・フルシーンスキー(監視役)、ヴァーツラフ・ネツカーシュ(パヴェル)、イトカ・ゼレノホルスカー(イトカ)、ヴラジミール・プターチェク(元酪農家)、ナジャ・ウルバーンコヴァー(レンカ)、ブラスチミル・ブロドスキー(元司書の哲学教授)、フェルディナント・クルータ(元理髪師)、ヤロスラフ・サトランスキー(看守アンジェル) 他

 

 1948年の二月事件以降共産党独裁となったチェコスロヴァキアで、思想犯として強制労働に従事する人々をユーモアとペーソスをふんだんに盛り込んで描く。西側の本の廃棄を拒んだ司書や、被告の権利を主張する検察官、果てはブルジョアの楽器と烙印を押されたサックス奏者などがそこに集まり、亡命を企てた咎で囚人となった女性たちと、束の間の交流を楽しんでいる。作品は完成後すぐに上映禁止となり、初公開は約20年後の1990年。ベルリン国際映画祭金熊賞などを受賞する。フラバルとメンツェルの共同脚本はアカデミー賞を受賞した『厳重に監視された列車』など数多い。 1990年ベルリン国際映画祭金熊賞と国際映画批評家連盟賞、1989年のベストチェコスロヴァキア映画チェコスロヴァキア映画批評家賞、1990年ピルゼン・チェコスロヴァキア映画祭フィナーレ、1990年チェコスロヴァキア映画デイズ(作品賞、ヤロミール・ショフル)

 


Iプロ『闇のバイブル/聖少女の詩』

 (Valerie a týden divů/1969/74/カラー/スタンダード)©State Cinematography Fund 協力:是空

 脚本・監督:ヤロミル・イレシュ、原作:ヴィーチェスラフ・ネズヴァル脚本・美術監督・衣装:エステル・クルンバホヴァー撮影:ヤン・チュジーク音楽:ルボシュ・フィシェル、ヤン・クルサーク編集:ヨゼフ・ヴァルシアク音響:エミル・ポレドニークプロダクションデザイナー:ヤン・オリヴァ

 出演:ヤロスラヴァ・シャレロヴァー(ヴァレリエ)、ヘレナ・アニージョヴァー(祖母・エルザ・母)、ペトル・コプジヴァ(オルリーク)、イジー・プリーメク(イタチ巡査)、マルチン・ヴィールグス(イタチ父)、ヤン・クルサーク(神父)、アレナ・ストヤーコヴァー(ヘドヴィカ)、カレル・エンゲル(御者オンドジェィ) 他

 

 

 美しい少女ヴァレリエは、謎めいた祖母と共に古い館で暮らす。ある日青い顔をした黒マントの男が現れ、処女についての説教をする。性や暴力が幻想的に描かれ、ベルガモ映画祭でグランプリを受賞。元祖ゴシックロリータの傑作と日本でも再評価が高まっている。本作の脚本はクルンバホヴァーによってニェメツが監督することを前提に書かれたが、彼は映画製作を禁じられていてイレシュが代役を務めた。チェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグ最後の作品と言われ、原作のネズヴァルはチェコ・シュルレアリスムグループの創始者で詩人。 *シカゴ国際映画祭・カラーカメラのためのシルバーヒューゴ賞(ヤン・チュジーク)、ベルガモ国際芸術映画祭グランプリ受賞